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これからは歩くのだ。

車を手放した。
地元に帰ってきたときに母からもらったシルバーのデミオ。

うちは田舎らしく車2台持ちなのだけれども、このたび旦那の地元に転居するにあたって公共交通機関が発達しており、駐車場代もバカ高い(軽くこっちの2倍)土地で2台持ちは不相応だろうということで手放すことになった。

私にとって車は「あくまでも快適に暮らす道具」(byたみお)走りゃ何でもいいと思っており、子育ての忙しさを言い訳に車の中は荒れ放題、いつも行くガソリンスタンドが給油時に丁寧に拭いてくれるので、4年乗って洗車すらほとんどしたことがなかった。

それでも。

手放すのは少し、いや結構さみしかった。
旦那のファミリーカーがデミオよりでかくて、新居のまわりの狭い道を運転するのが難儀、とか自分のドライブスキルへの自信のなさとか執着する理由はいろいろあったんだけど、なんとかデミオくん(私は自分の車をそう呼んでいた)持って行けないか、まぁ駐車場代はともかく維持費が高くてとてもじゃないけど持って行けないんだけど、ほんの少し悩んではやっぱ無理やな、と考えることをちょくちょくやっていた。

雨の日の風の日も、地獄のワンオペのほとんどの日々を共にしたデミオくん。
長女も次女も、産婦人科から最初に乗せて帰ったのはデミオくんだ。
2月の早朝、急速な陣痛に襲われた私をたまたま居合わせた旦那の運転でちんたら運んだのもデミオくん。
かわいい子どもたちの歌声も、ちっともかわいくない私の怒鳴り声も、低い声で交わす旦那との会話も、いろんな声を聞いてただひたすら走ってくれたデミオくん。

旦那よりもよっぽど、デミオくんは私の人生の一番しんどい時に寄り添ってくれた相棒だ。

ブレーキかけるとちょっと高い掠れた不穏な音がするし、ペダルの踏み心地が軽すぎてなんだか妙なデミオくん。
カーナビが古くて、新しい橋を知らないからいつも川の中を走ってるみたいになってたね。

こっちに帰って来てドペーパーだった私が片手で駐車できるようになるまで、何度も付き合ってくれた。

子どもを乗せて、事故したのは一回だけ。
渋滞の橋の上で後ろからおかまを掘られたんだよね。
あれは死ぬほどビビったな。デミオくんが修理される間、慣れない台車を擦ってしまって事故でもらえる補償以上に私がお金を払うことになったの知ってるかい。まぁただの私のドジで、デミオくんに非は一切ないのだけれども。

子どもを乗せて初めて高速に乗った日は本当に緊張した。
家に帰ってきたときの安堵感は一生忘れないよ。デミオくんもこんなビビりの運転手でこわかったんじゃないのかな。

車屋さんがデミオくんを取りに来る最後の日、繊細な娘が「デミオくんとおわかれするのさみしい」と泣いた。
私だってさみしかったけど、デミオくんはもっといい人に買ってもらうんだよ、と娘を説得した。
デミオくんはその古さにも関わらず、つい最近母から回ってきたカーナビとスタッドレスタイヤが奏功して売れることになったのだ。

どうか次の持ち主が、洗車好きでありますように。
私は白い線が付いたデミオくんの車体をさすって思った。
シートに子どもの靴の跡がついたりしませんように。
お菓子やティッシュのクズで汚く汚れませんように。
疲れた母親の怒鳴り声を、聞かずに済みますように。

車としてその寿命を全うするまで、事故なく、デミオくんが走っていられますように。

祈りながら手を振った。
デミオくんは礼儀正しい車屋さんの運転で、少し高い音を立てながら曲がって、やがて見えなくなった。



というわけで万歩計アプリをDLしてちょっとした所までは歩いてます。
歩くの楽しい(さっきまでの感傷はどこに)、車社会で失われた脚力を取り戻そうと思います。


by koto316 | 2017-12-25 14:20 | わたくしごと

踊らにゃsong!song!精神でやっていきたい二児の母。


by menko